建築パース、建築CGパースという言葉を聞いたことないでしょうか。
パースとはパースペクティブの略で英語の意味としては、見え方、透視図法です。
昔から建築のプレゼンの手法として存在しており、透視図法を用いると手書きでも正確に3次元化(イメージ化)できます。2次元の図面だけでは伝えることが難しいので、建築設計者の中では重宝されています。
特に建築の業界とは関係の無い一般の人にとっては平面図だけ見ても、内観・外観などイメージするのが難しく、設計者とクライアントを繋ぐ言語が建築パースと言っても過言ではありません。
しかし、建築パースと言っても手書きやCG、動画など、パースと言っても様々な種類があり、どんな時にどんなパースを選んだらいいのか迷いますよね。 この記事を読めば、あなたもどの手法のパースを選んだらいいかわかるはずです。
目次
■建築パースが使われる時
大きく分けると3つあります。設計検討時、コンペやプレゼン時、不動産の販売広告用です。
設計検討時の建築パース
これはどちらかというとクライアントに見せる為ではなく、社内若しくは社外の設計者同士がイメージ共有の為に作成する建築パースになります。
手書きでやったり、CGでやったりしますが、現状のイメージ確認、そして今後どうデザインしていくかの検討が前提にありますので、細かいところはあまり気にせず、取りあえずパース化してしまい、時間はかけないで製作する場合が多いです。作りこんでも結局あとあとデザイン変更してしまうので。
コンペやプレゼン時の建築パース
これは設計コンペティションやクライアントへのデザイン提案時に設計のアイディアを伝える為のものです。内観パース、外観パース、鳥瞰パース(鳥の視点から建物を見下ろしたパース)が使われます。
昔(10年以上前)は手書きパースが多かったですが、今はほとんどコンピューターで作成します。提案時の最終形として、作りこみますので、上記の検討時の検討パースよりも精度を上げてアウトプットします。
不動産の販売広告用
建売住宅やマンションの販売用でよく目にするものです。特にマンションの販売用はかなりの精度で製作します。写真と見違えるほどですので、時間とコストがかかります。これらは主に建築パース専門のCGデザイン事務所が製作します。
主な領域がCGスキルに依るので、建築設計者では難しいのです。逆にこれらを製作するCGアーティストは、建築の専門家では無い為、建築用語や建築の納まりにうとかったりします。
■手書きパース
正直今時、手書きはつらいです。
昭和の時代ならともかく、CGがメインの中で、手書きでやる理由がありません。
理由としては、時間がかかる、変更に手間がかかる、手書きのスキル次第ですが、CGと比べると見劣りする。
しかし、手書きならではの味を求めている場合はいいかもしれません。
また、検討用のパースで、スケッチレベルのラフなもので良い場合は、CGより早くできたりするのでおすすめです。
■CGパース
CGとはコンピューターグラフィックの略で、パソコンで製作パースのことです。ここで下記3DCGと種類を分けているのは、パソコン上の空間で3Dを立ち上げるか、2Dのままフォトショップなどで製作するかの違いで、あえて分けました。
つまり、ここでのCGとは上記の手書きパースをパソコン上でやっているだけにすぎません。
フォトショップを使えば、色の変更や添景の追加などの変更は楽にできますが、視点の変更が出来ません。視点を変更するとパースのラインが変更するからです。これは一から書き直すことを意味します。
なので、これ単体では使用せず、下記3DCGと合わせて使う場合が多いです。最後の画像調整や添景の追加など、仕上げとして使用します。これをレタッチと呼びます。
■3DCGパース
2021年時点での主流の建築パースです。これは3DCGソフトで、3D化→仕上げ素材をオブジェクトに貼る→光源の設定→カメラを設定→書き出し(レンダリング)を行います。
仮想空間上にモデルを作るので、正確に設計のアイディアをイメージ化できます。また、視点の変更(カメラ位置の移動)も簡単にでき、融通が利きます。
JWCAD、AUTOCAD、VECTORWORKSなどのCADソフトで2D図面作成してから、3Dソフトに読み込んで製作を開始するパターンが一番多いです。
メジャーな使用ソフトはこれら
・SketchUp
・3D Studio Max
・Cinema 4D
・Shade
・Rhinoceros
メジャーなレンダリングソフト(プラグインなので別途3Dソフトが必要になります)
・V-ray
・Corona render
今後VRや動画に移行すると思っています。しかし、業界全体がすぐにこれらに移行するとは思えないので、しばらくは3DCGパースが主流なのは間違い無いです。
■リアルタイムレンダリング
近年リアルタイムレンダリングソフトが普及してきました。上記で説明した画像イメージの書き出し作業のことをレンダリングと説明したしたが、実はこれ、時間がかかるんです。精度を上げれば上げるほど時間がかかり、数時間、半日なんて当たり前なんです。
何をしているかというと、コンピューターがせっせと光の反射などを計算して、物理的に現実世界と同じようにアウトプットしているからです。
当然その計算が終わるまで、写真のようなイメージには仕上がりません。
しかし、リアルタイムレンダリングはそのレンダリング作業がリアルタイムで進行します。よってパソコンの画面上で常に最終のアウトプット結果を目で確認できます。
これは従来の3DCGから大きな進歩で、例えば仕上げ材や色の変更、光源の位置や強さの変更をすると今までは、変更のたびにレンダリングをかけ、書き出すまでボーっと待っているだけだったのが、リアルタイムレンダリングは即時に確認できます。
これからはプリントアウトしたイメージをクライアントに見せるのではなく、ノートパソコン上でその場でリアルタイムレンダリングし、色の変更などデザインオプションを見せることができます。
メジャーなリアルタイムレンダリングソフトはこれら
・Lumion
・Enscape
・Twinmotion
■360°VR
VRとはバーチャルリアリティの略で、近年注目されているイメージ表現です。
ヘッドマウントを装着して、仮想空間を歩き回ることができます。
これらを可能にするのは、3DCG+リアルタイムレンダリングソフト若しくはBIMソフト+リアルタイムレンダリングソフトの組み合わせで導入することができます。
また、視点を一か所に固定して、360°レンダリングをかけたものをヘッドマウントやウェブブラウザやYoutubeでみることが出来ます。
一般的に使われるまでにはまだ時間がかかりそうです。スマホが普及したように、ヘッドマウントも一家に一台ある状況になれば、VRが主流になること間違いなし。
■動画
CGを動画化するというものです。個人的に私が今一番注目している表現です。
理由は5G時代になり、だれもが、YouTubeなどの動画プラットフォームへアクセスしやすい時代になったからです。しかも、3DCGを動画化する作業も10年前と比べ、かなり簡単になり、よりクオリティーも向上しました。
上記のVRはヘッドマウントの普及に時間がかかるので、ウォークスルーの体験を動画化してウェブに上げて、拡散もしくは限定公開する方がかなり楽で今の時代に合っています。
動画の書き出しは上記で説明したリアルタイムレンダリングソフトで簡単に作成することができます。
後は短編の動画をAdobe Premire pro などの動画編集ソフトでつなげるだけ。
弊社で作成した動画がこちら↓
■まとめ
いかがだったでしょうか。上から時代順に解説しました。手書きパース時代からテクノロジーの進歩と共に様々な方法が出てきました。設計自体も3D化が進んでいます。BIM(ビルディングインフォメーションモデリング)という概念です。
急には変わるとは思いませんが、今後は設計自体BIM化、建築パースはBIMモデルベースにリアルタイムレンダリングで即時ビジュアル化。ヘッドマウントでVR体験になるのかな?と未来の表現を想像しています。
新しい技術を導入して、表現の幅を探ってみてはいかがでしょうか。
■建築設計事務所をやっています。
ND Architects https://nd-architects.net/
■建築パースのチュートリアル動画をアップしています。
YouTubeチャンネル https://www.youtube.com/channel/UCborFJO25xAmG_3lf8hilJw
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