BIM(ビム)の基本について知っておくべき事

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あなたはBIMという言葉をいつ初めて聞いたでしょうか。

その時知ったBIMの定義をはっきり覚えているでしょうか。どのようにBIMを取り入れていくか、どこから着手すべきなのか。今回の記事ではBIMの基本をお伝えします。後日、それぞれの細かい技術について記事にする予定です。

BIMはBuilding Information Modelingの略

BIMとは?ビルディング・インフォメーション・モデリングの略でプロジェクトの質と情報伝達の質を上げるものと聞いたことがあるかもしれません。また、ソフトウェアが高く使える人が少ないので、コストがかかるものと認識されているかもしれません。

早速はじめましょう!

目次

BuildingのB

BIMの技術は全ての建築・エンジニアリング・施工の業界をカバーしており、従って大きく下記の分野に分けられます。

・建設(住宅、公共施設、病院など)

・インフラ(道路、線路など)

・設備(橋、トンネル、発電施設など)

また、インテリア業界、建設資材業界、建物管理の分野でもBIMの技術が使われています。

これらの業界はそれぞれに異なった特徴と課題があり、設計や3Dモデル化にそれぞれ異なったソフトウェアがよく使われていたりします。また、実施レベルでは各分野ごとで異なったソフトウェアの進化が見られます。しかしながら、BIMを用いてプロジェクトを発展させるという意味では、それぞれの基礎は似ています。

InformationのI

インフォメーション=情報はBIMの略語の中で最も重要な要素であり、BIMの利点はこの情報に有ると言っても過言ではありません。建築の構成要素において、検索のし易さと、異なるモノを読み解く明快さがあり、各関連要素同士が情報で結ばれています。

プロジェクトの予算がより有れば有るほど、情報をたくさん組み込むことができます。一方で、従来の情報の集約と交換方法(図面によるメールでの伝達方法)は情報の混乱とミスを招きます。情報の不足や重複はよくあることではありますが…。

例えば、こんな具合です。電気屋さんが現場監督に図面に不足の情報があるので問い合わせる。内容のわかっていない現場監督は設計者へその内容を伝達する。設計者はそれを受け、不足している情報や図面を監督へ返す。これらは全て、メールや電話によるものです。

BIMの考えでは、このような情報の混乱が、プロジェクトをスムーズに進める上で、最も大きな弊害だと考えます。BIMは欲しい情報へたどり着く速さと正確性に焦点を合わせています。共有データを用いた環境を通して、データを3つのグループに分け、情報へ容易にアクセスできる方法をとっています。3つのグループとは「グラフィックデータ」、「非グラフィックデータ」、「書類」です。

グラフィックデータ

建築要素、構造要素、換気などの設備要素を含む、3Dデータ、文字、記号があり、通常、それらは別々に作られ、それらを統合するソフトウェアによって統合されます。(Navisworks, Solibriなど) 3Dモデルは、主に情報を含んだ物体への関係性や文脈を与える場として機能しています。3Dで情報提示することで、簡単に特定の場所を見つけ出すことができます。(例えば、給排水管と空調ダクトが干渉している箇所など) 各要素は空間内で定義され、特定のシステムに属します。例えば、モデル空間の中のある柱を見ると、正確な位置、どの部屋に位置し、梁や天井など他のオブジェクトとの関係性を確認できます。さらに、その柱はグラフィック以外の情報も合わせ持ち、プロジェクトの関係者達により情報が付加されており、クリック一つで確認できます。

重要なことは、すべての要素をモデル化すればいいという事では無いという事です。不必要な細かすぎるモデリングが原因で、何十時間にも時間を無駄な作業により失うことになります。例えば、詳細にドアノブを作成したり、部屋にゴミ箱はカーペットを配置したりです。この様な無駄な作業を避けるため、LOD(Level of development)と呼ばれる開発レベルの程度を示す指標があります。どの程度の量と種類のグラフィック情報を現時点でのフェーズで必要か定義します。

非グラフィックデータ(形を持たない情報)

非グラフィックデータとはモデリングの核となるデータの事で、このデータこそがBIMを革命的と言えるものにしました。情報の適切な割り当てにより、計算書や数量明細書や見積書などの派生的な書類を簡単に作成することができます。BIMの中に作られたオブジェクトは素材、耐火レベル、色、値段、製造メーカーなどの情報をリンクすることができます。

情報はBIMソフトの要素の属性を編集して割り当てるか、新し属性を追加します。

設計者は情報をオブジェクト(椅子やテーブルなど)、建築(天井、床など)、スペース(部屋など)に割り当てることができます。さらに、情報は物理的にモデル化されていないもの(錠前や丁番など)にも割り当てることができます。プロジェクトの進捗に従い、情報レベルを上げていきます。例えば、コンセプトデザインのフェーズでは、ある壁を「100mmの非耐力壁」と情報を入れます。詳細設計のフェーズでは「LGS60mm+石膏ボード20mmx2」と詳細情報を付加していきます。そして、施工段階では実際に使うメーカー名や価格などの情報を付加していきます。

BIMモデル内の情報にアクセスするだけなら、高価なソフトウェアは不要で、無料のIFCビューアーがあります。(BIM Visionなど)

通常、要素の属性に割り当てられる情報のリストは下記のとおりです。

・材料

・物理的特性(耐火、防音など)

・メーカー

・価格

・メーカーのカタログ参照ページなど

・耐久性

書類

このチャプターでは、通常PDFなどの書類形式を思い浮かべると思います。(見積書や仕様書や表など) CAD時代では、これらの情報管理にたくさんのファイルや時間を費やしていると思います。BIMをプロジェクトに取り入れれば取り入れるほど、このようなマニュアル式の情報管理が減っていきます。

この旧時代の最大の問題は、情報の検索方法です。ばらばらのファイルの中から、ファイルを見つけ、その中から一つづつ探します。大半の人がこのような情報探しに無駄な時間を使ったことがあると思います。

情報がデータの中にあればまだましですが、大量のキングジムファイルの中から探すなんて最悪ですよね。幸運にも今のBIMによると、情報をモデルに割り当てることができるので、データを開けてオブジェクトを探して、クリックするだけで目的の情報にたどり着くことができます。情報はより正確性が高く、探すのが簡単になり、その結果、ハードディスクに保存するファイルの数が減っていきます。

書類の例

・集計表

・原価

・関係業者の連絡先

・建材の情報

・営繕管理に関する書類

共通のデータ環境

プロジェクトに関する全てのデータは共通のデータストレージに保存します。社内サーバーやクラウドデータサービスなどです。プロジェクトのメンバーは各自そこにある必要なデータにアクセスします。通常、データストレージ内にアクセス権の設定されたフォルダでいくつかフォルダ分けされています。

同じ場所に保存された同じデータをメンバー間で使うことによって、情報の間違いを避けることができます。例えば、意匠設計者が換気ダクトの情報を知りたい場合、設備の最新データが保存されている場所にアクセスして、それを建築図に当てはめてチェックするだけです。もし質疑やコメントがあれば、モデル上の項目に直接書き込めます。

プロジェクトの初期段階から、Iの情報は3つ(グラフィックデータ、非グラフィックデータ、書類)に分けることができ、プロジェクトが進むにつれて設計者や施工者により情報が増えていきます。プロジェクト進行時はプロジェクト情報モデルと位置付けることができます。そして、建物が竣工して、管理者に維持管理時に渡った時は投資情報モデルと言えるでしょう。この竣工時の情報を基に長期にわたって維持管理されていきます。

モデルに紐づけられていない情報は単なるランダムなデータでBIMの観点からは意味を成しません。

ModelingのM

Mの文字はモデリング、モデルの略と通常考えられています。それと同時に、モデリングのMと言うよりかは、ManagementのMと考える方が増えてきています。全体のプロセスの中で最もマネージメントが重要だからという考えです。

・Modeling(モデリング)

・Model(モデル)

・Management(マネージメント)

モデルはプロジェクトに参加しコラボレーションする人たちが全ての情報を扱う上で、焦点として位置づけられています。同時にモデル自体は設計された情報を可視化したにすぎません。可視化するだけなら、スケッチアップなどの3Dソフトでもできます(情報を持っていません)。RevitやArchiCadでモデルするなら、ただ3D化するだけではなく、モデルに紐づけた関連情報も入力することができます。

情報を含まないモデルは単なる3DCGにすぎません。

まとめ

・BIMは建設・インフラ・設備分野で使われている。

・プロセスはプロジェクト開始の設計初期から施工時、維持管理時にまで渡る。

・プロジェクトメンバー全て共有のクラウドデータを使用する。

・3Dモデルは情報の伝達媒体であり、相互関係にある。

・情報は3Dモデルと密接に結びつけられており、より正確に、簡単に見つけることができる。

・一般書類でモデルに紐づけることができない情報は、わかりやすい位置のクラウドデータの中で管理する。

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